ホテルの大浴場にいたら、雨がざんざか降り出して、雷も結構大きめのが鳴り出して、ちょっとうきうきして露天風呂に出た。
予想以上にいい感じだった。
見上げると、看板に光を当てる為の光が雨で揺れている。いつも鳴っている音楽もない。半分ほどは屋根があり、一応直接雨ざらしにはならない。思ったよりも熱いお湯に浸りながら、たまに肌を冷たい水滴が打つ。
いつか見た、日本橋にあるコレド室町のエスカレーター脇、ライトの下に水が滴る仕組みになっていて、波紋が壁に映っている。それを好きで用もないのに見上げていたのを思い出す。
思えば色々なところにいたのだけれど、東京にいた頃は東京にいた頃で、悪くはなかった。都会は嫌いだ、とか言いながら、実は田舎が好きなだけで、都会が嫌いなわけではないのかも知れない。
銀座店の店長をしていた頃、全然お金もないのに、ふとビルの下を見ると松屋の前が歩行者天国になっていて、ちりんちりんと風鈴がたくさんぶら下がった板を担いで売って歩いている人を見かけた。
面白くて下りて行って一つ買ったら、心が裕福なんだねって言われたのを覚えている。どんな風鈴だったか、もう覚えていないのに、あのおっちゃんの言葉は何となく覚えている。きっと嬉しかったのだろう。
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